スペイン旅行記その6~estoy aqui…愛こそ全て~

スペイン旅4日目後篇。3/9(土)夜。
いよいよ、メインイベントです。
鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団、ヘレス招待公演
【愛こそすべて】

会場は、Sala de la Compañía en Jerez de la Frontera。
元は教会なのか。。。とても美しい造り。

中は吹き抜けで、天井も高い。

ドーム型の天井、2階席もある会場。
席は自由席で、前の方から続々埋まっていきます。

この時同行したのは、昨日、リハーサルを一緒に見ていて知り合った
トレド在住の女性ライター、タエコさん
日本語の他に英語、中国語、フランス語、スペイン語、と計5カ国語を話す人。
スペイン語の速さがまた半端無かった。

何でまたトレドに住んでるの?と聞くと
「話すと長くなる。けど、要約すると、流れ流れてたどり着いた」
という、なんだかもう、強烈なエネルギーの持ち主。
舞踊団の方からは、マグマちゃんと呼ばれていました(笑)
私より早口の人に、久しぶりに会ったかも。

この方が、写真を撮る都合もあり、珍しく一番前にかぶりつきました。
比較的時間通り。会場が暗くなり、公演はスタート。
その公演の様子が、動画サイトに挙げられています。
【Compañia Mayumi Kagita y Hiroki Sato – AMOR, AMOR, AMOR】

・・・・・・
幕があがると、最初にこのシーン。

黒い衣装の真由美さんの周りを、赤いドレスの舞踊団の方々が囲み
カスタネットを鳴らしながら、同じ振りで踊ります。
フラメンコの衣装にはあまり見られない
キャバレー風の、総スパンコールの衣装。

照明を受けてキラキラと輝く、赤と黒のコントラストは
物凄いインパクト。
ヘレスの観客も、息を飲んで引き込まれていくのが、感じられます。
その後、
”愛こそすべて”という、そのストレートなタイトル通り
台詞はありませんが、さまざまな愛の形を表現したシーンが
次々に登場します。

女性ダンサー1人だけで
群れからはぐれてしまった一羽の蝶のように、孤独な女性を舞うシーンであったり
春の出会いを現すような、パステルカラーの衣装の女性3人と
男性3人の華やかなシーンだったり
うまくゆかない男女の心のもつれを現す、激しいシーンだったり…

しかしその中でも印象的だったのは
真由美さんが踊られた、白い衣装での明るい踊りでした。
終始ピンク色の照明があたっていたのもありますが
真由美さんの、あまりに幸せそうで、喜びが全身から弾け飛ぶような踊りが
広いホールの隅々まで、ピンク色に染め上げるようでした。

ちなみに私は、この時の衣装がピンクだったと思いこんでいて
翌日、真由美さんにお会いした時に、あのピンクの衣装の踊りが
とても素敵だった、と言ってしまい
「え?ピンクのドレスなんて無かったよ?」と笑われてしまいました。
そして、シーンは徐々に、核心の方向へ。

・・・
焦点の合わない目の浩希さんの後ろに
真由美さんが回り込み、絡みつきながら踊るのですが
2人の目線は終始、合うことがありません。

後で団員の方に聞くと、ここは
女性はここには居らず
男性は虚ろに、その幻影を見ている、という設定だったとか。
そしてその後、衣装を変えて真由美さんは
真っ白い衣装で登場。

先ほどの、幸せな踊りとはうってかわって
何かを抱え、苦しみ、切々と訴えるような
胸をしめつけられるような踊り。
最後は、
翻弄されて力尽きるように、舞台にがっくりと崩れ落ちる。。

~・~・~・~・~
意外なエンディングだった。
”愛こそすべて” というタイトルと
プライベートでもパートナーでいらっしゃる
鍵田・佐藤両氏の主演、ということもあって
勝手に、ハッピーエンド、を、想像していた。

後で聞くと、最後の踊りは、許されない恋の渦中に居る女性の姿だった、とか。
この時、ずっと歌われていたフレーズが
未だに耳に残っている。
・・・
estoy aquí aquí, para quererte
estoy aquí aquí, para adorarte
yo estoy aqui aqui, para decirte
amor, amor, amor!!!
私はここに居る、あなたを愛するために
私はここに居る、あなたを崇するために
私はここに居る、あなたに伝えるために
愛、 愛、 愛!!!!!!

・・・
原曲は、【Yo soy aquel / Raphael】という
古いスペイン歌謡曲だそうだが
現代風のアレンジで、とても耳に残った。
aqui,aqui、ここに、ここに、と繰り返されるフレーズが
切迫感を煽り
聞いているだけでも胸が締め付けられるような
2人の歌い手の、乾いた哀情を湛えた声も相まって
繰り返しにつられて小さく口ずさむ内に、目の奥が痛くなってくる。
思わず、愛、って、何だ、、、と、考えこんでしまった。

・・・
この年齢になると
若い頃のような、好き!→付き合う!→結婚!というような
足し算と掛け算だけで成り立ち、正の整数で完結するような恋愛には
あまりお目にかかれない。

年がゆけば行くほど、恋愛の結果は、負の数になったり
素数になったり、割り切れなかったり、解なし、であったり。
好きになった相手には、もう既にパートナーが居たり、家庭もあったり
或いは自分自身に家族があったり。

また或いは、外からは幸せそうに見えた家族が
十年単位の家族生活を経て、別れていたり
逆に、ずっと若い時に離婚を経験したけど
何度目かを経て、やっと幸せをつかんだり。

今月4/27にトリビュートライブをやる、
私の敬愛するBarbra Streisand
21歳と若くして結婚し1子を授かるが29歳で離婚、
後に50代半ばで再婚しているが
その頃から歌が急速にまろやかで柔らかくなり
ちょうど同じ頃に発売した新譜の、彼女自身の筆によるライナーノーツにも
「結局、全ての歌は、ラブソングだと思うの」
とも書いている。

彼女が年を経て文字にする、”全てはラブソング”、というこの言葉は
今回の ”愛こそすべて” という公演のタイトルと、共通しているように感じる。

・・・
”愛こそすべて” の最後が、許されない恋に悩む女性の姿、というのは
なかなかにずっしりとした印象を残した。
ハッピーエンドで終わられたら、これほどの印象は無かったかもしれないと考えると
この舞台の構成は成功だと言える。

想いは、報われないかもしれない、
それでも人は、誰かを、人々を、何かを、愛して生きていく、ということなのか。。。?
舞台を見終わった最後に、心の裏側に貼りつくように残った疑問。
未だ答えは出ていない。

しかしそれは
この期間中、この公演でも聞かれた
歌い手たちの、あの声・・・・

何か大切なものを、自身の内側へ封じ込め
胸の内に抱え
慈しみ、、愛おしんで

張りあげるようで、張りあげ尽くしてはいない
身体の中で爆発してはいるけれども、それは外からは見えていない

想いを閉じ込め、中で迸らせるように歌うことで
結果的には、なりふり構わないほどのエネルギーが伝わる。。。

乾いた中にも、情愛の湿度を含んだ
あの、不思議な静けさと情念を湛えたあの声、あの歌に
愛とは、何なのか、
愛こそすべて、とは、どういうことなのか、という答えが
隠されているような、気がしている。

~・~・~・~・~
終演後、打ち上げにも誘って頂いて
ヘレスで知らぬ人は居ない、という
有名なお店 ”GITANERIA(ヒタネリア)”へ。

FINOが美味でした。。。本当に。
そして、団員の方や、プレイヤーの方々と
本当に、たくさん話しました。
自分のライブの後は、あんな音楽的な話はしないな、、普段、、、(笑)

そして、あれだけ踊ったのに
まだ打ち上げ会場で手拍子と歌で踊り始める団員の皆様の
エネルギーと、そのセッションクオリティの高さに
若干唖然としつつも
自分もライブの後、まだセッションしたりするのと同じか、、、と思うと
外からはああいう風に見えているのか、と笑えてきたり。

・・・
飲んでいるうちに、いつの間にか降っていた雨も止み
深夜の雨上がりの石畳を、ホテルまで歩いて帰りながら
まだ
estoy aqui, aqui, para quererte…(私はここにいる、あなたを愛するために)
というフレーズが
延々と回り続けていました。

そしてそれは、ただの脳内ヘビーローテーションというよりも
自分の中の何かを、動かし始めていて
それが、何かを形創ろうとして
むぎゅむぎゅと蠢いていて
酔っているのとは違う、妙な感覚がとても、むずがゆかった。

そしてこの感覚は、結局は、帰国しても、延々と続いたのです。
何かの形を残せ、とでも言わんばかりに。
あの雨上がりの石畳を
何かを言いたいのに言葉にならないまま歩き
足音だけが、狭い路地にこだましていたあの感覚は
きっと
ずっと
ヘレスでの想いとして、残っていくのだと
思います。

・・・
愛こそ、全て。
愛、こそ、全て、か。。。。。

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