スペイン旅行記その3~ドゥエンデ・フラメンコの魔物~

旅日記、2日目後篇。3/7(木)夜。

今回この旅のきっかけとなった方と
さっそくヘレスのバルで飲んでいて
「あのさ、この後、すごくいい公演があるらしくって
チケット売り切れるっていうから、取っておいたんだけど
良かったらどう?
もし行かなかったら、誰か誘うけど、、、」

「お! どなたの公演ですか?」
「ええとね、ファルキートっていう人?」

フ ァ ル キ ー ト !!!!!!!
ファルキート
フラメンコをやっている人ならば
ほぼ誰でも知っているであろう、若手バイラオールの雄。

カルロス・サウラ監督の「フラメンコ」に12歳で出演したその踊りは
子どものものとは思えぬ正確なコンパスとその切れ味、
伝統を受け継ぎつつ独創性に富んでいて
まだフラメンコをやり始めて間もなかった私でも
その名前が頭に刻まれた。

まさかそんなすごい人を
到着その日に見られるとは。。。
行かないはずがありません。
スタートは遅めの21時。
会場は、TEATRO VILLAMARTA、というメイン会場。

伝統を感じる、美しいホールでした。

意外に時間通りに始まった公演。
の、様子がyoutubeにあがっていましたので
ぜひともご覧ください。
動画見るだけでもド肝抜かれます。
【Abolengo/Farruquito】

名門の血筋、という意味の「アボレンゴ(Abolengo)」というタイトルが付けられたこの公演。
2人の踊り手が主役でした。

ファルーコを祖父にもつファルキートと
カルメン・アマジャを伯祖母に持つ、カリメ・アマジャ。
ファルキートも本当に素晴らしかったのですが
このカリメ・アマジャ
・・・・凄すぎました。。。。

壮絶な速さと正確無比なサパテアードと
何かの早回しにしか見えないような、まっっったく軸のぶれないブエルタ。
席は、ちょうどステージ上手の真上の2階席、一番前。
生音に近い音が聞こえ、眼下にすぐ本人たちが踊っているという
絶好の席だったのもあり
最初はうわーーーすごい!と感嘆をあげていましたが

あまりの凄さに、手すりにアゴをのせて、もうただただ、唖然、茫然、と
口をあんぐりと開けたまま、一つキメ振りが終わるたびに
ため息。。。。

~~~
その昔、中学生の頃。
サグラダファミリアを知った ツーリングエクスプレス、という漫画に
どっぷりはまっていた時期がありました。
国際刑事警察機構=ICPOの新米刑事と
そのブラックリストのトップに載っている超一流の殺し屋とが織りなす物語で
世界中を舞台に、政治経済問題などを巧みに取り入れたなかなかハードボイルドな作品。

私が最初にハマった漫画で、今でも所有していますが
今までに何十回と読み返し、何巻がどんな話だったか、台詞も何なら言えるほど。
ロシア編、香港編、と色々な長編物語があるのですが
スペイン編で、アンダルシアと、フラメンコについて描かれる場面が登場します。
(この後、バルセロナ編で、サグラダファミリアとガウディについて描かれる。)

こで、”ドゥエンデ”という言葉が登場します。
ドゥエンデ、とは、スペインの詩人・ロルカが使っていた言葉で
踊りや歌に潜む
「神秘的で、言い難い、魔物のような魅力」のこと。
その漫画にはフラメンコについて、こう書かれていました。

~フラメンコには、ドゥエンデ(魔物)が棲んでいて
見る者も、踊るものも、演奏するものも
全てが引きずり込まれ、理性もずたずたにされる~
見ているだけで、理性が飛ぶほどの音楽、踊り、って
どんななのだろう。。。。
フラメンコへの憧れはここから始まりました。

~~~
ファルキートと、アマジャの踊りを見ていると
何だか意識が遠のいて
眠っているのだか、起きているのだか
今ここに居るのが現実なのか
よくわからない瞬間が何度か訪れました。

あれが正に、ドゥエンデ、だったのではないだろうか。。。。
覚えているのに、覚えてない。
でも、ふわふわしたような感じでは無く
もっとずっしりと、重く、甘い、、、何と言っていいのかわからない
魔的な瞬間。

公演は、机をみんなで叩いて、歌と手拍子だけで踊る場面など
フラメンコの発祥を現すような場面もあり
また、アマジャの、溢れて溢れてどうしようもなく
抑えても抑えてもほとばしり切って
思わず頭を振ってしまうような振りから
彼女の熱が伝わってきて
本当に感動した。

終わってから、同行した方は
「くちあけすぎて、、、アゴがおかしい。。。。」と
思わずつぶやいておられました。

そして、驚いたのは、アンコール。
何と、お客さんが全員、フラメンコのリズム(3拍子)を刻むのです。。。
足で1拍め、そして手で3連符を刻み
見事なパルマ。。。

もちろん観光客の方もいらっしゃるけれど
多くは地元の方。
文化的レベルが、おそろしく高い。。。
ヘレスの観客は凄い、と聞いていたのは
このことだったのですね。。。

さてその後、公演を見に来ていた日本人の方々と合流。
(この方々がとんでも無い方々だったことは、翌日知ることになります)
一緒にご飯食べましょう、と誘われ
近くの、蛸が美味しい、というお店へ。
ここのガリシア風蛸が、あまりに絶品でした。
なんだあれ。
美味すぎて写真撮ることなんか完全に忘れてた。

そしてその後、宿に帰るのかと思いきや
深夜0時から、今度はカンテのコンサートがある、と。
これも、すごくいいよ、ということだったので
ファルキートの余韻をどっぷり引っ張りながら
宿の近くの、少し小さなライブハウスくらいの大きさのバルに到着。
お客さんは既に超満員。
酔いも手伝ってか、ものすごい熱気です。

あ、そうそう、スペインの方は、だいたい、昼間から飲んでます(笑)

このコンサート、踊りはなく、歌とギターだけだったのですが
とても心揺さぶられた。
ソウルフル、とか、簡単に使っていい言葉じゃないな、と思ったり。
魂の裏側に、思いを込めるように歌うのです。
ファルキートの公演の時も思ったのですが
カンテの方の声は、意外に、小さい。
小さくて、びっくりした。

もっと、今日通ってきた、あの広大な草原を
累々と渡るような、そういう声なのかと思っていた。
身体の、心の、奥の奥の、さらに裏側に閉じ込めるような
そんな歌い方。

あんな声は、一体、どうやったら出るのだろう。
声を出しているんじゃない、むしろ、閉じ込めている、というか。。。
なのに、ほとばしるように歌っている。
どうやって歌っているのか、全くわからなかった。。。

終始、青い照明の中で展開する歌とギター、手拍子。
即興で歌詞を創って歌っているらしい場面も何度かあり
お客さんからは、笑いがおこったり、そうだそうだ!という声があがったり。
スペイン語が出来たらなあ。。。
というのは、この後3日間でイヤというほど思い知らされるのですが。

結局このカンテの公演が終わって、しばらく居残って飲み
宿に帰ったのは実に夜中3時を過ぎていました。
初日から、濃い。。。。(笑)

~~~
ロルカの言葉より。
「ドゥエンデとは、踊りや歌に潜む、神秘的で、言い難い
魔物のような魅力のこと。

あらゆる芸術にドゥエンデは宿ることが可能ですが
もっとも広く宿るのは
音楽であり
舞踊であり
朗誦される詩。

なぜならこれらは、演奏したり演じたりする
生きた肉体を必要とするからであり
未来永劫にわたって生と死を繰り返す形式であり
今という正確な瞬間のうえに
その輪郭を浮かび上がらせるからだ」

芸術を芸術たらしめる根源的な力。
それが、血の教養によってもたらされるのが、ドゥエンデ。

音楽の神様、的な言い方には色々なものがありますが
ミューズ、とか、ディーバ、という響きよりも
この、魔的な、ドゥエンデ、という響きは
私を強く惹きつける。

見る者も、演者も、理性を吹っ飛ばされて
丸ごと、引きずり込まれるような、そんな音楽。
・・・引力・・・
この言葉は、この日のホールの照明のように
自分の今後を仄暗く照らす
灯りとなりそうだ。
IMG_0289.JPG

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