化学反応

ライブの感想で
「今日は初めてのメンバーだったが、化学反応が起きた!」
という表現が見られることがある。

観客からだけではなく、演奏者本人からも。

しかし実際の化学反応は
試薬の性質や反応の条件・・・

爆発性物質なのか、何に溶けるのか、酸素下で存在出来るのか
反応は空気中なのか不活性ガス下なのか、室温なのか加温なのか冷却下なのか
その下調べと準備を念入りにし、十分に条件を検討して行わないと
反応は起こらない、か
或いは暴走して制御不可となり、大事故を引き起こす。

突発的にその場で思いつくものをぱっと配合しても、反応しないか
あるいは反応は何か起こるだろうが
その反応を成功させるためには、過ぎるほどの条件検討が必要だ。

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バイオリンのmaikoさんとの2日間が終了した。
今回は
”化学反応”を起こせた、と言っても良かったと思う。

化学反応には
爆発的に起こりすぎるので、氷やドライアイスで冷却して
反応を穏やかに制御するものや
反応が起こりにくいので加熱するものなど、さまざまな条件があるのだが

今回のライブは
化学反応的には、非常に緩やかな反応。

AとBを空気中、室温で2時間撹拌、常圧濾過して不純物を除き
溶媒を減圧下除去して得られた生成物を再結晶して精製、的な。

こういう穏やかな条件で得られる生成物は
得てして収率も高く(A+B→Cの過程で材料の無駄無くCを得られる)
精製した結晶もきれいな針状結晶だったりする。

試薬同士が反応の進みやすい相性だということももちろんだが
その進みやすい反応も、条件を間違えれば暴走する。

今回の化学反応は
針状結晶を高収率で得られる、無理のない反応と、条件だった。

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今回は
お互いのイメージから
曲を書きあったり
共作で1曲、作曲したり

個人的に長年の懸案事項だった
ずっとやってきているけど、いまひとつ気に入らないままやっていた
あるカバー曲のアレンジを、完成させたり、と
下準備と条件検討をかなり念入りに行った。

曲を書き合うために、相手の志向を聞いたり
どうでもいいような話に興じたり。

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音楽の現場では
事前リハも殆ど無い、その場のセッションになることも多いが
大した準備もなされないままに行くと
その場での即興力で何某かは起こるにしても
個々の演奏力や技量から生まれるものに、頼らざるを得ない。

しかしそれは化学反応とは言えず
単なる化合物の混合に過ぎない。

料理でいえば、素材の組み合わせがたまたま上手く行ったサラダのようなもので
原材料自体は何も性質は変化していない。

炒め物や煮物といった、素材に熱と調味料が加わって
絶妙に変わっていく化学変化の妙という類ではない。

今回のライブは、事前リハも無く
そもそも何と言ってもほぼ初対面に近い状態(当日で会うのはまだ3回目)で
本番前に軽く合わせただけだったが

驚くほど何の違和感も無かったのは
単純に化合物同士=本人同士のウマが合っているということもあるが
かなりの時間をかけて
お互いの動向や志向を知り
曲を書き、アレンジするという時間をかけて
反応条件を検討した、というのが多分にある、と思う。

=====
2日間、私の家に泊ってくださったmaikoさんと
色々な話をする中で
自分のもう一つの仕事=分析業、というものが
想像している以上に音楽にもプライベートにも
大きな影響を及ぼしていることに気づかされ
若干愕然とした場面もあったが

今回のライブの内容は
その分析脳で解析してみると、非常に意義があった。

=====
集客、経費、宣伝、と
個人経営のミュージシャンには、音楽以外で手を取られることが沢山ある。

ともすれば、集客や宣伝に時間をとられるあまり
肝心の音楽への時間が圧迫されたりもする。

今回、気を付けたことは
そういった雑念に気を取られず
とにかく出来る限り純粋に
自分自身の音を創ることに
もう一度立ち返るということだった。

これをやればウケるかな、とか言うことも含め
諸々の雑念を取り払い
”自身の音楽”だけに集中した。

もちろんこうすることによって派生した問題もあり
例えば聞いて下さるお客様には若干難解な場面があったり
退屈だったりした場面があったかもしれない。
でも今、ここで立ち返っておく必要があったのです。

=====
化学反応を制御し、新しい物質を創る、というのは
実際に私の大学院時代のテーマだった。
私が関わっていたのは、フラーレン科学の一端。
フラーレン=サッカーボール分子。ちょうどサッカーボールと同じ構造をしている。
220px-Fullerene-C60.png

ストレスのかかる分子構造をしていて、合成も難しい。
中には非常に難しく、過酷な条件の反応もある。

しかし、あまりに過酷な条件の反応は
生成物も不純物が多かったり
収率が悪かったりで
再現性が悪かったり(一度やった反応をもう一度やっても同じものが作れない)
生成ルートをあれこれ考えあれこれ試して、全部失敗して

その先に、ある時
用意されていたかのような、まっすぐで美しい反応を見いだせることがある。

音楽も同じで
試して試して試した結果
この条件だと美しく仕上がる、ということがある。

そうして出来たものは、形も整い、無理が無く、美しい。
そこに至るまでに、重ねる条件の検討。
その大切さをひしと感じた二日間だった。

そして今年の締めに、沢山オリジナルが出来て良かった。
懸案だったカバーのアレンジは、”Fragile”。
もう何年も歌っているけど、いつも何か違うと思いながら
いいアレンジを思いつかず、半ば諦めかけていた曲。

諦めずに、Tryし続けていると
ある時、霧の中にまっすぐに道が見える、という経験が
今年の下旬になって続いている。

=====
敬愛する画家、東山魁夷氏が
自身の代表作 【道】 について
氏が語っている言葉。

~~~
人生の旅の中には、いくつかの岐路があり
私自身の意志よりも、もっと他力にうごかされている・・・。

その考え方は今も変わらないが、
私の心の中に、このひとすじの道を歩こうという意志的なものが育ってきて
この作品になったのではないだろうか。

いわば私の心の据え方、その方向というものが
かなり、はっきりと定まってきた気がする。

しかし、やはりその道は、明るい烈しい陽に照らされた道でも
陰惨な暗い影に包まれた道でもなく
早朝の薄明の中に静かに息づき
坦々ととして、在るがままに在る、ひとすじの道であった。

~~~
今住んでいるのは
南向きに大きく窓が取られた部屋で
冬は低い朝陽が、やわらかく室内を目覚めさせてくれる。

冷気が凛と、背筋を伸ばし
道を見据えるには良い季節。

一緒にやりましょうと言ってくださったmaikoさん
そして会場とさせていただいた
京都伏見Silver Moonコウキ、
大阪Royal Horse小林さん、関さん、
何より来て下さった皆様

本当にありがとうございました。

~奥本めぐみ×maiko DUO~
◆12/8(日)@京都伏見 Bar Silver moon◆
<1st>
時には昔の話を/加藤登紀子
Fragile/Sting
Pearls/Sade
Silent Night
HOPE/maiko
雪の降る後に。/曲:maiko、詞:奥本めぐみ
<2nd>
Rhapsodie Triangle(Inst)/奥本めぐみ
雨障み~Amatsutsumi~(Inst)/奥本めぐみ
一羽の鷹/奥本めぐみ
The Christmas Song/Nat King Cole
水鳥の谷/奥本めぐみ
花の名前/奥本めぐみ
<Encole>
星降る森/奥本めぐみ

◆12/9(月)@大阪Royal Horse◆
<1st>
時には昔の話を/加藤登紀子
Fragile/Sting
雨障み~Amatsutsumi~(Inst)/奥本めぐみ
Have yourself a merry little Christmas
HOPE/maiko
雪の降る後に。/曲:maiko、詞:奥本めぐみ
<2nd>
Rhapsodie Triangle(Inst)/奥本めぐみ
Scarborough Fair
一羽の鷹/奥本めぐみ
I can see clearly now
水鳥の谷/奥本めぐみ
花の名前/奥本めぐみ
<Encole>
星降る森/奥本めぐみ

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