疑問符を見逃すな
歌でプロ活動を始めた頃
仕事につなげていこうと暗中模索。
そんな時、一冊の翻訳本を見つけた。
歌手として、自分の仕事としていくために、という内容の本。
そこには
・一日の練習時間の配分
・ライブのセットリストの作り方
・プロモーションの方法
・実際のライブで準備するもの
・歌い手としての体のケア
と言った具体的な内容が沢山記されていた。
最近ではネットで日本語のサイトでもそういったことを講義している先生方が沢山いるが
当時はネット自体あまり一般的に普及しておらず
何かを尋ねられる人も少なく、参考にしてみようと思い購入した。
自分でライブをやるということもまだほとんど無い頃
セットリストの作り方、なんていうのが載っているので
随分実践的な本だなと思ったものだ。
”セットリストは
バラード、ミディアム、アップテンポ
ミディアムでも、ボサノバ、4ビート、など
バラエティに富んだ内容にしましょう”
なるほどなるほど、そういうものですか、、、と
赤線を引き(ジャズの教則本だった)
自分の歌える曲を増やすためにどうするか、というくだりにも
赤線を引き
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先週、教則本を大量に整理していて
この本、もう長いこと見てないな、随分よく読んだよなあと思いながら
中を開いて内容を思い出し、茫然とした。
補足のように
”自分が表現したいものを大切にしなさい”、と、書いてはある。
しかしその殆どの内容が
こうすることが一般的な形である、と言った記述。
これこそ、ずっと見えない形で縛られ続けていたもの。
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基本的にバラード好き
普段自分が聞く曲もそういうのが多く
もともとクラシック上がりなのもあり
リアルタイムで同世代が聴いていたような曲はほとんど知らない。
別に興味もなければ歌いたくもないアップテンポの曲を探し
”みんなが知っている曲”を80年代POPS全集的なのを借りては
歌えそうなものを練習し
自分から出てくるものではなく
書くべき、と指示されたようなものを書き
そうすべき、と指示されたようなセットリストにしていた。
誰に強制されたわけでもないのに。
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教則本は山のように出ている。
学ぼうと思えばいくらでも学べる。
しかし教則本の道筋に知らぬ間に誘導される危険性を
忘れてはならない。
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学んでゆく中で必ず生まれる、大小の疑問符。
せっかく生まれた「?」を見逃すことも多い。
聞いても、そういうものだ、と片付けられることも。
人に聞く、ネットで調べる、本を読む。
調べるならまだいい。
一瞬気づきかけたのに自分で流してしまう疑問符のどれほど多いことか。
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見れば12年前に買ったもの。
何も知らなかったし、分かってなかったし
この本に学んだことはそれでも、たくさんあった。
もう自分には要らないもの。
朝、出かける途中で捨てた。
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疑問符は直感。
そこに必ず、疑問符が起きた理由がある。