蝉と盆踊り

ベランダでぱたぱた、と音がした。

蝉だ。
覗くと地面を這いつくばっている。
 
しばらくするとまた、ぱたぱた。
覗くともう裏返ってしまい、足が無益に泳いでいる。
 
掴もうとしても掴むもののない空。
だんだんと絶えていく命の行方を、香雪とじっと眺めていた。
 
ーーー
 
先日この辺りでは盆踊りがあり、少し時間が出来たので祭囃子に誘われて覗いてみることにした。
 
やぐらの上で浴衣の先生達が舞い、周りをひらひらと踊り歩く人々。腰がずいぶん曲がったおばあさまもいたり、見たことのない踊りを見よう見真似で体を動かす子供、浅黒く日焼けして盆踊りなんておよそ縁のなさそうな若者が先生も見ずに踊っていたり。文字通りの老若男女。
 
盆踊りを見て、寂しく哀しい気分になるのは初めてだった。
 
よくよく考えれば、盆踊りというものがそもそも、死者の魂を送る踊りなのだ。今までそれを意識したことは無かった。ベビーカステラやお好み焼き、ヨーヨー吊りの縁日の賑わいに騙されて。
 
ーーー
 
蝉の最後の足の揺らぎが止まった。冷たいコンクリートの上では寒かろう。香雪と土に戻しに、少し外へ出る。
 
雨が降り始めた。
このあと強く、降ってくるという。
 

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