La ràzon de vivir
cantará el corazón
la razón de vivir
cantará sin hablar ni sentir
*
生と死の境界線は、寄せる波際のように
行きつ戻りつ、常に形を変えて、そこに揺らめいている。
決して掴めない。
しかし確かに、そこに在る。
彼岸と此岸。
迷い人を誘うさざ波。
一歩先にはいつも、向こう側がある。
*
6月6日。
フラメンコの本場ヘレスから迎えられた
偉大なカンタオール、Manuel de la Malena氏の歌と
今回私を呼んで下さった、日本を代表するバイラオール佐藤浩希氏の
極上のパルマに挟まれるという
とんでもない場所での、カンテデビュー。
アルテイソレラの発表会の、舞踊伴唄。
全17曲種、23曲のうち
7曲種、8曲を歌わせていただいた。
Petenera、Guajira、Tanguillo de Cadiz、Garrotin、Rumba、Bambera、Buleria
この最後のブレリアで取り上げられていたのが
【Canción de Orfeo】、黒いオルフェのスペイン語バージョン。
何度も繰り返される、叫びにも近い冒頭に挙げた歌詞。
次第に熱がこもってくる。
もともと歌う予定ではなかったのだが
知っている曲だったのもあり、歌詞をチェックして
リハでうっすらと歌っていると浩希氏が
「歌える?んだったらがっつり声張ってくれない?
がんがん行きたいんだよ!」
この曲は、みんなで歌うはずだった。
この日のカンテは4人。
リハでもみんな歌ってた。
本番、だんだん私だけになっていった。。。何で?笑
*
半年前、あの黒く揺らぐさざ波に誘われるままに
あちらへ行っていたら
この舞台に立ってはいなかった。
生の境界線なんて本当に、あいまいなものだ。
波間で揺られて、もがきあがいているときに
自分の時は、何人かの人がたまたま、あるいは意図して、筏を投げ入れてくれた。
あの筏がもう1日でも遅かったら
私は、ここには居ない。
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フラメンコは、生と死、絶望、悲嘆、そういった
人間の黒い部分を抉り出し
内に込め、それを吐きだし、歌い、踊る。
リハで何度も、「もっと!嘆いて!」と
檄を飛ばされる。
前回2月に、シギリージャをやったときもそうだった。
怖い。
目の前に、あの境界線を見ていた記憶がまだ鮮明に残っていて
向こう側に体を投げ入れるのが怖い。
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本番前。Manuelがぽんぽん、と肩を叩いて
簡単なスペイン語で、話しかけてくれた。
何を言っているか分かった。
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飢餓、病気、貧困
しかし人を本当に蝕むのは孤独だ。
誰にも必要とされない
誰にも認められない
腹をいくら満たしても、孤独は命を満たさない。
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カンテは今年始めたばかりだが
フラメンコの唄、ギター、踊り、パルマ(手拍子)
どれをとっても、本来音響の必要の無い、生活の中の音楽と舞踊。
民衆の苦しい生活の中から生まれた、生々しい生、命、歌。
ずっとやりたかったこと。
アルテイソレラの”フラメンコ曾根崎心中”を見て、フラメンコバイレを習い始めてから
いつかこの人たちと、と思っていた方々。
途切れかけた線を何度も繋ぎながら、たどり着いた縁。
その中で時折、筏をまた補強してくれる人々。
諦めたら、そこで終わり。と
言うのは簡単で、月並みな言葉だが
4月の極悪、5月末のヒーテレ、そしてその翌週の、これ。
あの時
全部辞めてしまわなくて
よかった。
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Manuelが、終演後言ってくれた。
お前の歌は良い。
フラメンコは初めてかもしれないけど
ちゃんと、ずっと、歌ってきたんだなって分かる。
歌おう。これからも。